令和
平成31年(2019年)4月1日(月)午前11時半過ぎ、菅官房長官より「次の元号は”令和”(れいわ)」との発表。
「大化」に始まる元号(年号)は、『令和』で248番目。
元号一覧 (日本) - Wikipedia
これまで元号は漢籍を元に決められてきましたが、今回初めて国書である『万葉集』が典拠(出典)になったとのこと。
正午からの会見で、安倍首相は『令和』に込めた思いを次のように語っていました。
見事に咲き誇る梅の花のようにひとりひとりの日本人が、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたい…(略)
そして、SMAPの『世界にひとつだけの花』を例に。
(槇原敬之さんヴァージョンも好きですよぉ!)
新元号は、頭文字MTSHは除外だろうし、AIUEOのI,Oも1,0と混同されやすいからないだろうし…KNYRWか、濁音…まさか撥音始まり?!それは漢字の文字的に可能性が少ない…をっと、Rですか! 第一声には「ん?れいわ!?」で漢字が浮かばず、菅長官が額を掲げられて「へぇ!」という感じでした。
↑バックは、梅の花にちなんで薄紅梅色にしてみました。
毛筆風はあえて止めて、金文体にしようかとも思ったけれど丸篆刻。漢字発達の側面から考えても、書体に歴史あり!ですね。
今は花(見)と言えば桜というのが共通認識という感じで、「見事に咲き誇る梅の花のように…」と言われてもピンと来ない方もいらっしゃるかも知れません。
けれども、万葉の時代(奈良時代)には花(見)と言えば梅で、万葉集で詠まれている花のトップは、倍以上の差で桜ではなく梅なのです。当時、梅は大陸からの渡来植物でまだ珍しかったとのことで、見慣れた桜よりも珍重されて、それを愛でるということは上流階級の人達の特権だったのでしょうね。
万葉集は、身分や性別に関係なく優れた歌が収録されているとされていますが、比率はどうなっているのかしらん?無学・勉強不足で分かりませんが。(-_-;)
なお、平安の世になって花見は梅から桜へと移り(戻り…なのかな? ex:古今和歌集)、鎌倉時代にはそれが武家にまで広がり、庶民が広く観桜を楽しむようになったのは江戸時代と言われています。(ex:落語『長屋の花見』)
けれども、ソメイヨシノの作出&各地に植えられたのは江戸末期から明治になってから。クローンであるソメイヨシノは各地方でほぼ同じ時期に咲き始めますが、それ以前はヤマザクラを主として他の桜も混在して開花時期もまちまちだったため、現在のようにソメイヨシノの2週間足らずの短期間に花見が集中することなく(今も局地的に緋寒桜や河津桜を愛でられますが…)、様々な桜の開花を順番に楽しんでいたようです。それも素敵っ!(*´▽`*)
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『令和』の典拠(出典)になったのは、万葉集の『梅花の宴』の序文の一部。
「天平2(730)年正月十三日に大宰府帥(だざいふのそつ・そち=長官)の大伴旅人(おおとものたびと)が『梅花の宴』を催し、大宰府の役人32名が集って梅花の歌を三十二首詠んだ」
…のだそうで、風情がありますね。盃に梅の花を浮かべたり、梅花や柳の枝を頭に飾ったりしながら花を愛で、歌を詠む。月も大きかったので、明るい月明かりに梅花が照らされてより一層神秘的に魅せてくれたでしょうし、盃にも月が写り込んでいたかも知れず、1300年近くも前のことなのに眼前に様子が思い描けそうです。
(男女共に花を身に付けることは、その生命力を頂く意味がある…とは、テレビ番組出演されていた万葉を研究されている大宰府万葉会の方の談)
NPO・ボランティア登録団体リスト - 大宰府万葉会
手持ちの万葉集は実家にあり、白文がどのように記されているのか分かりませんが、
于時初春令月 氣淑風和
梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香
初春の令月にして 気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ
梅は鏡前の粉を披(ひら)き 蘭は珮後(はいご)の香を薫らす
「初春の良い月の夜 空気も澄んで風も柔(和)らかい
梅は鏡の前で白粉(おしろい)で装う美女のように白い花を開き
蘭は高貴な女性が衣に焚きしめたお香のような馥郁とした香りを放っている」
…って、かなり無理がありますかね?💦
珮=おびもの=玉(ぎょく)や金属で出来た装身具、宝飾品。それを身に付けられるくらいの高貴な女性で、お香も高価な物だと思われます。
鏡前(きょうぜん)は、単にその状態を言い表しただけなのか、それとも満月間近の鏡のように輝く月の許のことも含めているのか…
蘭も実際には何の花を表しているのか分かりませんが、現在の洋ランのように派手な姿ではないのは確かで、山野草の小さな花かも知れません。春蘭、金蘭…中国からの帰化植物でも古い時代に根付いたというシャガ(射干)も考えられるかな?と思いましたが、香りは余りしないような。香りが強い日本から古くからある蘭のような植物…どういうものなのでしょうね?
いずれにしても、読解力・想像力・知識なさすぎで分からないことだらけ…。( ;∀;)
少々ヘソ曲がり的に考えると、確かに国書である万葉集から採られたのですが、中国では昔も今も花見と言えば梅。(近年桜の人気も上昇しているそうで、中国国内で楽しむだけではなく、日本まで花見にいらっしゃる観光客も増加)そして和歌は万葉仮名で記されていますが、序文は漢文で書かれています。これまでの元号は漢籍を元にしてきて、今回初めて国書から採られた。けれども、その中の序文の漢文から取ったというのは、いくらか忖度したのかしらん?…などとも思えたり。結局、万葉集のみならず当時の知識人はおしなべて漢籍の影響を受けていて、内容も遡れば漢籍を元にしているということになるのでしょう。
ここは序文だけではなく、三十二首の和歌を味わってみたいところです。
序文の解釈や全文、漢籍とのつながりなどの考察は以下のサイトを。
『令和』
最初はパソコンでは一発変換できなかったけれど、すぐに学習したみたい。最初の変換は「れいわ」→「例話」でした。パソコンには「中の人」居る?スマホはまだダメ…。
『和』の文字には好意的な意見が多いように見受けられますが、反面、『令』の字に対して違和感やら嫌悪感を述べている人が多いような…。
確かに「号令」「命令」の「令」にも使われます。私も「令」の字で、真っ先にそれらが浮かんだのでした。(;^ω^)
次に浮かんだのは『大宝律令』で、「決まり」「掟」「お達し」「法律」という意味も含んでいることも分かります。
元々は『神様のお告げ』の意味なのだそう。ご託宣!?
そして、次には結婚式などの席表などで「令夫人」と表記されるのを思い出し(この呼び方自体に、違和感や嫌悪感を覚える方がおられても不思議ではない世の中。嘘かホントか、結婚式席次表を見て「私の名前は"令"じゃない!」と怒り出したご婦人がおられるとか…。(;^ω^))、「令室」「令嬢」「令息」…尊敬の意味を含んでいることも分かります。
「良い」「立派」という意味もある…で思い出したのは「巧言令色」というのが、かなり情けない。( ;∀;)
余談ながら、昆虫の幼虫は何度か脱皮しますが、その状態を表すのに「令」の字が使われて、1令(初令)、2令、3令(終令)…(その後、蛹→成虫)と言います。
これは「齢」の字が簡略化されたのでしょう。
今回、「令和」の他に5つ(全部で6つ)の候補があったそう。
- 「英弘」(えいこう)
- 「広至」(こうし)
- 「万和」(ばんな)
- 「万保」(ばんぽう)
- 「久化」(きゅうか)/←これは2日の昼にラジオで聞きました
う~ん、どれも立派な感じだけれど、少々重い…重厚さを求めるならば良さそう。
(最後に判明した「久化」は重くは感じられないけれど、個人的には何かシックリ来ないです。おそらく「きゅう」の音がキュ!と締まる感じで広がりが感じられないから)
「れいわ」の「れ」:(語頭にある)「ら行」は、音声学的には「歯茎側面はじき音」(はぐき そくめん はじきおん)という、世界的に見ても珍しい発音方法の音なのだそう。(話者によって、少し違う種類の「はじき音」にもなる…と言われても、日頃全く意識していないので違いがサッパリ分からない。(^_^;))
「令和」のイメージは、全体的に流麗・優美な雰囲気を纏いつつも、ら行の音のポップな軽やかさも感じられます。
また「れ」の元になった漢字は「連」(れん)とされています。
みんなで「連携」して「平和」を育み「軽やか」で「良い」世の中に…って感じ?
「平成」に変わった時には、昭和天皇崩御で世の中は自粛モードでした。
いつもは騒々しい横浜の街中も音楽やネオンサインが消えて、町全体が沈んで薄暗かったことを思い出します。連日テレビや新聞で、昭和天皇のご病状や体温などまで報道されていたのですものねぇ…。( ;∀;)
けれども、今回は生前退位なのでそういうこともなく、明るい雰囲気に溢れていて、自然と気持ちも浮き立ちます。
街中の号外に殺到する人の数ったら…(゚д゚)!
早速『万葉集』の売り上げが急上昇!だそうです。(^_^;)
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もしかして、来春には観梅がブームになったりして?
北の方ならば、まだこれからの地も多いですね。
桜に比べると開花初めは随分と寒いけれど、花の時期が長くて良いかも。
香りも桜よりも強いですね。(今回使われた序文にもあるように、白粉のような少し粉っぽい香りで好みはありましょう…それは桜も同じで)
首都圏だと、熱海のMOA美術館収蔵の尾形光琳の紅白梅図屏風を拝見(国宝なので初春の短い期間のみの公開で、例年混雑!)、その後、熱海や湯河原の梅林へ流れて万葉の世の雰囲気に浸る…なんていうツアーも人気になるかも!?
大伴旅人邸宅跡とされる大宰府政庁跡にある坂本八幡宮には、既に観光客が押し寄せているとか。この邸宅で梅花の宴が行われたとみられ、『令和』ゆかりの地として注目度急上昇!坂本八幡宮も太宰府市も対応にテンヤワンヤのようです。(゚Д゚;)
観光施設『大宰府館』では、まさに梅花の宴の様子を博多人形で再現したジオラマや万葉集の世界に触れられる展示や講座もあるようです。こちらと共に梅の季節に太宰府天満宮を詣でるのも、人気が出そうですね!梅が枝餅食べたひ…。
良くも悪くも日本人…いや、私が悪乗りしてるだけ!?(;・∀・)
元号の成り立ちを調べると、世の為政者は暦を司ることが真の権力者であるという図式のようで(シーザー=ユリウス・カエサルのユリウス暦とか、グレゴリオ暦とか…)、中国を元に古くは南東アジア圏に広く用いられてきた元号も、その流れを汲んでいるのですね。それの善し悪しはさておき…
ともあれ、平和な世の中が長く長く続きますように!!(-人-)